2008年1月号

「仮設構造物(土留め工)」のはなし

 仮設構造物は本体構造物の計画に大きく影響を及ぼすものです。また、地下部分は構造物を支持する重要な部分です。本体の構造物は安全性と経済性を両立するよう設計・施工されますが、一時的にしか使用されない仮設構造物はより経済的な要求が多くなります。確かに事故は減少していますが、報告されないトラブルの件数はむしろ増加していると思われます。施工に携わる技術者に仮設構造物を再認識して頂きたいとの考えから「仮設構造物(土留め工)」特集することにしました。連載予定は以下のとおりです。

1.土留めの形式
2.土留めの推移
3.底面の破壊
4.近接施工
5.土留めのトラブル
6.設計・施工上の留意点
7.最新の知見

飛島建設(株) 土木事業本部 技術統括部
設計G課長
 荒井幸夫

1.土留めの形式
 仮設構造物は目的とする構造物を作るため一時的に使用されます。その中で土留めは地下に構造物を作るために採用されています。土留めの各部の名称は図−1のとおりです。
 今回はこうした土留めを分類する方法を何種類か紹介します。壁体の種類によって分類する方法、支保形式によって分類する方法、掘削と地下構造物の躯体築造方法によって分類する方法などです。

壁体の種類による分類
 土留め壁は背面の水に対して開水性、遮水性に大きく分かれます。さらに細分化すると、開水性土留め壁には木矢板、軽量鋼矢板などを用いた簡易土留め壁と親杭横矢板土留め壁があります。親杭は明治時代後半まで木製で、それ以後レール、形鋼などを用いて掘削深度の需要に合わせて剛性を上げてきました。また、遮水性土留め壁には様々な種類が開発されてきました。鋼矢板は大正時代の前後から輸入され始め、昭和初期から国内で生産されだしました。これより後は鋼管に継手を取り付けた鋼管矢板、あるいは単杭を連続して打設したもの、多軸のオーガーで柱列式に削孔して連続した土留め壁を築造するSMW、さらに、掘削深度が大きくなるにつれて矩形に掘削してその中に鉄筋コンクリートの土留め壁を築造する鉄筋コンクリート地下連続壁などが開発、実用化されてきました。

図−1 土留め工各部の名称

支保形式による分類
 よく用いられる支保形式を分類したものを表−1に記します。自立式は支保工のないもので、内部の掘削も容易ですが、土留め壁を支えるのは掘削面側地盤の抵抗だけですので地盤が比較的良好で掘削深度の浅い場合に限定されます。切梁式は切梁段数や水平方向のピッチなどを調節することができ、自由度が高いと言えます。グラウンドアンカー式は切梁の代わりに背面側地盤に定着させたグランドアンカーにより支保するものです。背面側にグラウンドアンカーを打設し、支持できる地盤があることが条件となります。また、切梁式に比べて工費の面で不利になることが多いので、切梁が設置できない条件がある場合に採用されることになります。控え杭タイロッド式は背面側に打設した控え杭とタイロッドで支保するものです。
 切梁もやはり木製から始まり、やがて鋼製になりました。現在では剛性の大きな形鋼が用いられます。もっと大きな剛性が必要なときには複数の鋼製切梁を用いる集中梁や、鉄筋コンクリート製のスラブを逆巻きで打設する方法があります。逆に簡易な土留めではパイプサポートなどを支保工としていることもあります。

図−1 土留め工各部の名称

掘削・躯体構築方法による分類
 順巻き工法は、掘削、支保工設置を繰り返して最終床付けまで掘削し、躯体構築・埋め戻しと支保解体を繰り返すものです。それに対し、逆巻き工法は掘削と本体スラブ構築を繰り返して構造物を築造する方法で、支保工を併用することもあります。本体構造物に打継が発生、スラブの強度発現まで次段階の掘削に進めないなどの欠点がありますが、スラブ上に用地が確保できること、土留め壁の変形を小さく押さえることができるなどの利点があります。このほか、掘削面積が非常に大きい場合などではアイランド工法やトレンチカット工法などが採用される場合もあります。

土留め形式の選定
 以上が土留め形式のみについてですが、地盤改良に代表されるような補助工法と組み合わせて土留めの形式を選定する必要があります。ただし、選定にあたっては自立式、切梁式の親杭横矢板あるいは鋼矢板形式、躯体構築は順巻きを基本とし、条件に当てはまらない場合を考慮しながら最適な計画に変更していくのが順当と言えます。