1.用語による検索
  用語により全文を検索すると、その用語を含む論文・レポートが表示されます。
検索ワード 検索ヘルプ
対象 すべて 土木施工管理技術論文集 JCMマンスリーレポート
2.目次で検索
  表示画面の目次の論文名をクリックすると論文が表示されます。論文回数を示すインデックスをクリックすれば元に戻ります。
※PDF資料をご覧いただくためには、Adobe Reader(無料)をこちらからダウンロードしてください。

トップページに戻るトップページに戻る
34

少数主桁橋の床版コンクリート施工技術と
ノロ止め対策の研究

日本橋梁建設土木施工管理技士会
清水 健介 ※
1.はじめに
 合理化橋梁が出現しコスト縮減の効果を発揮してきたが、一方、現場架設の付帯構造物の施工が難しくなってきた。たとえば、鋼とPC床版との組合せで構成される少数主桁橋は、施工途上においては決して強い構造物とは言えず、両者が合成されて初めて安全で、かつ強い構造物となる。特に、床版施工においては、上フランジ上面コーナー部からコンクリートを立ち上げるという制約条件があることから、支保工や木材の変形および鋼桁の製作キャンバーとの摺り付けを考慮に入れると、型枠施工は大変難しく現場泣かせとなっている。また、PC鋼線の緊張や壁高欄・舗装等の重みによって肌隙も発生する。これらの問題が解決できて初めてコスト縮減をめざした高品質の合理化橋梁が施工できると言える。
 以下に、現場における問題とその解決に向けての研究開発と効果等について述べる。

2.現場における問題点
 少数主桁橋の現場打ちコンクリート床版で問題となる事項は以下のとおりである。

2.1 フランジ上面コーナー部からのコンクリート立ち上げに関して
(1) 施工ラインがフリーという問題
 フランジコーナー部のトップ面と側面が型枠の施工ラインとなるが、両者をゼロタッチさせることは大変難しい。その理由は、鋼桁の製作キャンバーに直線形状の桟木や合板を一致させることの難しさと、型枠材料の乾湿変形によるゼロタッチ保持の難しさの二つが挙げられる。写真−1は型枠とフランジ側面とのタッチ状況を下から見上げたもので、施工時のゼロタッチ状態から木材が変形し、隙間が発生した状況を示している。
(2) 型枠施工手順の問題
 図−1に床版全体の型枠施工手順を示す。

図−1 型枠組立手順
 
写真−1 型枠の肌隙

 張出し側はフランジ縁端を起点にし、型枠を張出していくためフランジ部には隙間が発生しぬくい(木材の乾燥収縮による影響は別として)が、主桁間側は橋梁センターを起点として左右に@→D、@´→D´の順に型枠をセットしていくため、最後に嵌め込む合板のゼロタッチ調整は大変難しい。図−2は嵌め込み後(A)部をゼロ状態にし、(B)部に隙間を設けるという一般的な方法を示している。従って、(B)部には施工誤差も含め2〜3mmの隙間ができるため、コーキング処理にて隙間を処理してきた。しかし、このコーキング材は支保工の変形や型枠の伸縮に対応できない場合が多く、割れたりレイタンス処理時の圧送洗浄でなくなったため、ノロ漏出の原因を引き起こしている。

図−2 型枠嵌め込み手順

2.2 鋼桁および支保工の変形問題
(1) 吊りボルト方式の問題
 少数主桁橋のように床版張出し量が大きいと大引き材に大きな水平力が作用し、型枠を吊るボルトは面外方向に引張られ変形する。それに伴って型枠はフランジ側面から離れ隙間が発生しノロが漏出する。また、吊りボルト撤去後の床版下面の孔部にはモルタル材が充填されるが、それが振動や収縮の影響によって脱落したりして第三者への危害に発展する恐れも存在する。
(2) 打設時の鋼桁および支保工の変形問題
前述の二つの境界面に型枠を揃えるという難しい問題のほかに、図−3に示すコンクリート打設時に発生する鋼桁および型枠支保工の変形(δ)が問題となってくる。特に、コンクリート打設は張出し側からの片押しとなり、その重みによって支保工および鋼桁は外側に引張られ、フランジ側面(A)部に隙間が発生しノロ漏出が多く見られる。

図−3 鋼桁・支保工の変形

(3) ノロが塗膜に与える問題
 一般に鋼材はコンクリート中では、セメントの水和によって強アルカリ(pH≒12、Ca(OH)2、NaOH,KOHなど)の不動態被膜ができ発錆しないが、CO2や水との接触によりコンクリートが中性化すると急激に発錆する。よって、鋼もコンクリートも水との接触を遮断することが最重要課題となる。写真−2は、型枠撤去後のフランジ側面に付着したノロの凝結状況を示すが、美観を損ねることはもちろんのこと、塗膜に与える影響やコンクリート強度に与える影響が心配される。特に、耐候性鋼板やMIO塗膜部へのノロ汁付着は、除去が難しく施工には細心の注意が必要となってくる。

写真−2 ノロ固形物付着状況

2.3 PC鋼線の緊張および壁高欄・舗装等の重みによる肌隙問題
 PC鋼線の緊張によって横桁近傍のコンクリート下面に肌隙が発生するという報告がある。最近、その報告が少なくなったようであるが、床版張出し部の壁高欄・舗装等の後死荷重が付加することによって肌隙がおこる可能性も残されている。肌隙があると、その部分に水分が滲み込み鋼材やコンクリートを劣化させるため、事前の対策が必要となってくる。

3.工夫改良による問題解決
 コンクリート立ち上がり部の型枠施工上の問題点や肌隙・塗膜保護等の対策についての創意工夫は以下のとおりで、結果としてすばらしい効果を得ることができた。
(1) 支保工の変形に対する対応策
 コンクリート打設時、支保工は大きな水平力によって引張られるため、その変形防止と型枠施工技術の改善をはかる目的から、主桁腹板に孔を明け、その部分に床版および作業足場用の多目的治具を取付けることを提案した。(図−4)

図−4 腹板孔明け部への床版・足場兼用治具の取り付け状況

 その結果、@大引き材の水平方向への変位がおさえられたこと、A大引き材を上下動させる機能を有していることから、型枠の組立・解体が容易になったこと、B吊りボルトで型枠を吊る必要がなくなったこと、C腹板孔明けに伴って足場用金具や吊りボルト用金物等の小型材片がなくなったことにより、鋼重やコストが減り、また美観に優れた橋梁へと結びつけることが出来た。
 この提案に対し、腹板および孔部の安全性を検証するため、FEM解析を実施し疲労強度および局部応力照査を実施し、問題がないことを確認した。
(2) 境界面造りへの対応策
 フランジコーナー部には、型枠を拘束するストッパー材がなく強制的に止める方法もない。天端を揃えようと四苦八苦しても、刻々と変化する木材の乾湿変形や支保工・鋼桁の変形等によって、『いたちごっこ』を繰り返し現場泣かせとなっているのが現状である。
 そこで、@フランジ天端に境界線を作る。Aフランジコーナー部の塗膜保護をする。B肌隙が発生しても、その部分を隠し保護をする。Cノロの漏出を防ぐ。等の条件を満足するようなビードを開発した(図−5、写真−3、4)。

図−5 ノロ止めビードの形状
 
写真−3 ノロ止めビード(タイプー1)の取付け状況
 
写真−4 ノロ止めビード(タイプー2)の取付け状況
 
写真−5 耐候性鋼板へのビード取り付け状況

 このノロ止めビードの開発によって、フランジコーナー部には拘束可能な境界面が出来上がり、@型枠施工の迅速化、A型枠調整作業の省力化、Bノロ漏出の防止、C肌隙部への雨水浸透防止、Dフランジコーナー部近傍の塗膜保護などを同時に行うことができ、大きな効果が得られるようになった。写真−5は耐候性鋼板の橋梁に取付けられたノロ止めビード(タイプー1)を示す。

4.まとめ
 少数主桁橋の現場打ちPC床版施工に関する現場での問題点やその解決策について報告した。型枠受け支保工の高精度化、簡素化を目的とした腹板への孔明けが認められたことは、まさに合理化橋梁の施工技術発展の突破口となった。この技術によってコスト縮減や美観に優れた橋梁への道は大きく開かれたと言える。しかし、まだまだ改善しなければならないところもあり、これを起点とし更なる問題解決へ向け努力したいと思っている。

※ JFE工建株式会社 橋梁・構造計画部部長


目次へ戻る

一般社団法人 全国土木施工管理技士会連合会